OVER THE AIR(OTA)とは?SDVで実現できる機能と今後の進展

日々進化を遂げるSDV(Software Defined Vehicle)で使用されている技術の中でも、特に注目を集めているのがOver The Air(OTA)です。スマートフォンのOSやアプリを最新版に更新するのと同じように、無線通信を活用し、車両のソフトウェアやファームウェアを遠隔から管理・更新できたり、リアルタイムのデータを収集したりすることができます。

OTAは、現代の車で多く利用されているコンピュータ制御に影響するものであり、SDVの中核を担うものでしょう。ただし、この技術もまだはじまりに過ぎません。今後のOTAの進展次第では、SDVは単なる共通部品としての商品化(コモディティ化)ではなく、ビジネスチャンスの可能性を大きく広めるきっかけともなるものです。

本記事では、OTAの基本概念から、ソフトウェアがハードウェアから分離されるSDVにおいて実現可能な機能、さらには今後の進展に焦点を当てて詳しく解説します。より具体的にどのような機能を実現でき、その先の展望として何を見据えているのか、ぜひ最後までご一読ください。
 

OVER THE AIR(OTA)とは?

Over The Air (OTA)とは、無線通信を介してソフトウェアやファームウェアなどのアップデートを含む、車両とのデータの送受信を行う技術のことです。また、特定のECUのファームウェアアップデートを目的としたOTAを指して、FOTA(Firmware update Over The Air)と呼ばれることもあります。

  • SDV(Software Defined Vehicle):ソフトウェアによってカスタマイズ(個別化)される車
  • コネクテッドカー(Connected Car):情報通信技術(ICT)を備えた自動車

などの車両は、インターネットや他の通信ネットワークに接続するために、車載通信モジュール(DCM)を搭載しています。このモジュールを通じて、OTAを利用し、車両と外部との双方向通信が可能になります。

OTA技術の活用により、従来ディーラーで行っていたコンピュータの手動更新に比べて利便性が格段に向上し、車両やソフトウェア、ハードウェアの管理・更新が迅速かつ容易に行えるようになります。
 

OTA技術によって実現できる機能

ここからは、OTA技術によって実現できる主な機能を以下に分けて解説します。

  • 無線通信の管理
  • 車両情報の管理
  • 車載ソフトウェアの更新
  • 車両からのリアルタイムデータの収集
  • 車両アクチュエーターへの指示
  • セキュリティ対策

無線通信の管理

まず、OTA技術によって実現できる機能の1つとして、無線通信の管理があります。管理とは、無線通信システムの運用や維持、性能を最適化することなどが挙げられます。具体的には、以下のような診断が行われます。

  • OTA通信の接続状態は正常か
  • 接続履歴の確認
  • 通信の品質(速度、遅延、エラー率など)の測定
  • 通信のセキュリティを監視

例えば、接続状態が不安定な場合は改善や車両のソフトウェアのアップデートが必要と判断できます。また、接続履歴を記録・分析し、何が起きていたのかなどの原因も特定できるでしょう。このように、OTA技術における無線通信の管理は、これから触れる車両情報の管理や更新においての基礎となるほか、得られた情報をもとに安定性やセキュリティを向上させることもできるでしょう。
 

車両情報の管理

OTA技術によって実現できるもう1つの機能が、車両情報の管理です。従来、車両の状態はディーラーが専用のツールを使用してコンピュータから送信される信号を解析し、その結果に基づいて診断を行っていました。しかし、OTA技術を用いることで、以下のような情報へのアクセスや操作が遠隔で行えるようになります。

  • VIN番号(Vehicle Identification Number):車両を特定するための一意の識別番号
  • 車載ソフトウェアのバージョン:車両に搭載されているソフトウェアの現在のバージョンを確認・更新
  • ハードウェアのバージョン:バージョンを確認してパフォーマンスや互換性の観点から最適化

さらに、OTA技術によって、車両で発生している問題をリアルタイムで検知したり、専用アプリを使用して車内の環境をコントロールすることも可能です。例えば、車内温度を確認し、エアコンをリモートで起動して車内を快適な状態にするなどの応用が考えられます。
 

車載ソフトウェアの更新

他にも、OTA技術を活用して車載ソフトウェアの遠隔更新も可能です。通常、ソフトウェアの更新には、以下の2つの方法があります。

  • 有線による方法
  • 無線による方法(OTA)

これまで、車載ソフトウェアの更新は有線による方法が主流でした。なぜかというと、車両に搭載されているソフトウェアを更新するために、ディーラーや修理工場などに車両を持ち込む必要があったためです。一方で、OTA技術を使えば、ソフトウェアイメージを車両に直接送信し、最新の機能を提供したり、不具合を修正したりできます。
 

車両からのリアルタイムデータの収集

OTA技術を導入すると、車両に搭載されたセンサー等からリアルタイムデータを収集できます。具体的には、以下のようなデータの収集が可能になります。

  • 走行状態:速度、加速度、Gセンサー、ステアリング角、ブレーキ圧、タイヤの空気圧 など
  • 車両内外の環境:気温、湿度、騒音、光量、気圧 など
  • 位置情報:GPS座標、ジャイロセンサーによる向き など
  • 運行履歴:走行距離、時間、燃費、エンジン回転数 など

例えば、車両の状態を継続的に監視できれば、故障の兆候を早期に発見できます。また、車両からカメラやセンサーのデータをリアルタイムで収集すれば、自動運転システムの開発・運用にも活用できるでしょう。このように、車両から得られるリアルタイムデータは、運転の安全性を向上させると共に、メンテナンスのタイミングを最適化するのにも役立ちます。
 

車両アクチュエーターへの指示

同様に、OTA技術を用いることで車両アクチュエーターへの指示もリモートで行えます。車両アクチュエーターとは、電気信号を読み取り、物理的な動作で様々なシステムや部品を動かすために使われている機械のことです。従来、車両アクチュエーターへの指示は、運転者の操作、あるいは車載コンピュータからの指示として、機能安全が考慮された車両のECU(電子制御ユニット)を介して行われていました。一方で、OTA技術を導入すると、機能安全が考慮された車両のECUを介して、遠隔で車載アクチュエーターへ指示を出して以下のような動作を実現できます。

  • ブレーキシステム
  • ステアリングシステム
  • エンジンのバルブ制御設定
  • 自動車のドアや窓の開閉

例えば、ブレーキを動作させて安全を確保したり、状況に応じて窓を開閉したりするなどが可能です。万が一、車両が故障した場合でもエンジンアクチュエーターに指示を出せれば、安全な停止を実現できるでしょう。ハードウェアとソフトウェアの分離をスムーズに進めるためにも、すでに組み込まれている機能安全に関わる部分を維持・活用する事が重要です。
 

セキュリティ対策

最後に、OTA技術は、車両、通信、クラウドサービスの全てを包括的に守り、車両のセキュリティを向上させるためにも利用できます。主に、各領域で最新のセキュリティ機能への更新を行い、システム全体を常時監視します。加えて、定期的な侵入テストを通じて攻撃者からの脅威を常にチェックし、潜在的なセキュリティリスクにも対応可能です。

また、OTAには、ソフトウェアやセキュリティパッチのアップデートを無線経由で迅速に実施する能力があり、これによって車両が常に最先端の保護を受けることを保証します。

セキュリティは安全で信頼性の高い運転環境を提供する上で不可欠であり、そのためには適切な対策と技術の進化が欠かせません。
 

OTA技術の今後の進展

SDVにおけるOTA技術は、今後さらに進化が期待されている領域です。現在、多くの人がOTA技術をSDVの核と考え、車両に様々なアップデートを行うことが重要だと認識しています。

しかし、今後の進展で目を向けておきたいのは、『ソフトウェアとハードウェアを分ける動きが背景にある』ということです。そのため、将来的にはECU全体ではなく特定の機能だけを更新・改善する「機能更新」を無線で行うことを目標として動きだす見込みです。

また、現在は同じ機能を持つアクチュエータ(動作を起こす装置)でも、車種や自動車メーカーによって設計が異なっています。そこでもし、世界中どこでも使える乾電池(単3電池等)のように、ハードウェアを共通化するとどうでしょうか。

今まで、特定の領域を対象としており一定量しか作れなかったものが、共通規格になれば生産数は大幅に増加するでしょう。車種やメーカーを問わず様々なデバイス・アクチュエーターへ対応したアップデートも行えるようになります。特定のモデルやメーカーに依存しない共通の部品も作られるかもしれません。ハードウェア寿命が長いことを期待される側面もあります。そうすると、今後ハードウェアは、ハードウェア性能の違い(耐久性や省エネなど)だけで差別化されるようになり、SDVのハードウェア評価基準も変わっていくはずです。
 

まとめ

OTAは、遠隔地から無線通信を利用してデータを送受信する技術であり、多数のデバイスやシステムにおいて機能アップデートやソフトウェアの保守管理を行う際に不可欠なものです。今後も、SDVの業界ではOTA技術を含めて様々な進化やイノベーションが期待されています。

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監修者情報

監修:石川誠司

経歴:
1989年~2004年 自動車部品メーカーにてGPS 受信機とジャイロセンサーの開発を担当。2004年~2017年 外資系半導体メーカー 技術サポート部 マネージャー。2017年~現在 イータス株式会社 技術サポートを担当、2022年からはSoftware Defined Vehicle 関連製品とサービスのソリューション・セールスを担当。